2007年1月24日水曜日

時間はどこで生まれたのか

時間はどこで生まれたのか」を読了です。
著者、橋元純一郎さんは、物理の先生です。
詳しくは、氏のサイトを参照下さい。
著者の話が上手なのかすごく楽しく読むことが出来ました。
大まかなストーリーは、哲学的な時間の定義を現代科学の観点から定義し直そうとするものです。

哲学者マクタガードの思想から、時間をA系列、B系列、C系列と分類しています。A系列とは、主観的な過去から現在、未来へと流れる時間です。B系列とは、客観的な時間で、過去から現在を現した歴史年表のような時間です。C系列とは、ただ出来事の配列で過去や現在、未来などなくすべてが並列にある間隔です。

初めに相対性理論の時間概念についてですが、時間は実数空間で現し、空間は虚数空間で現す時空の中で現されています。光の速さを基準にして、光よりも遅い部分に関しては過去・現在・未来の流れが成立しているます。ここで大事なことは、光を絶対的な基準として、時空を考えると、他人と同じ時空を共有することが出来ないと言うことです。時空はミンコフスキー空間で現されます。ミンコフスキー空間とは、ユーグリット空間で現すことができない相対性理論の幾何学を、4次元の多様体として統合し記述した空間です。

次に量子論的な時間概念ですが、結論からいうと量子的なミクロの世界では時間は存在しません。ミクロの世界では、温度も色も存在しないのと同じように時間も実存しないそうです。不確定性理論から導かれてますが、直感的に分かりませんので、勉強が必要です。時間と空間が実存しないミクロの正解では、因果関係が存在しません。これを図で現すとファインマン図形になります。ミクロの世界の時間はC系列と言えます。繰り返し述べられていたことは、時間や温度などの物理量は、ミクロの世界では存在せず、マクロの物質で測定することで初めて表に現れて来るということです。

そんなわけで、時間はミクロの世界で生まれたのではなく、マクロの世界で生まれたという事が結論です。

しかし、A系列の主観的な時間系はどのように定義づけることができるのかという回答については、エントロピー増大の法則が関係しているそうです。エントロピー増大の法則とは、マクロの世界では、秩序のない方向に進んでいくという法則です。しかも、エントロピー増大の法則は、可逆的でないそうです。例えば、意志的で無ければ、机の上はどんどん散らかってきます。これは、エントロピーが増大しています。

長くなったので、後は自分で読んで下さい。

この本でなるほどと思ったことがいくつかあります。
一つは、時間や空間は共有できないという、相対性理論の時空間があるために、
住宅は一室空間になっているのではないかと、勝手に納得しました。
量子論では、ミクロの正解ではC系列の時間系であるという事実からは、
一昔前に流行ったスーパーフラットなすべてを並列に扱うようなプランは
この間隔から生まれたのではないかと勝手に納得しました。

量子論からは、ミクロの世界を住宅という最小限の建築に当てはめて、新しい発想がないかと思ってみたり。
エントロピーが小さい状態を秩序がある状態だとすると、建築が時間の流れに逆らって、エントロピーが小さい秩序的な物を想像していることだと思ってみたり。
逆にエントロピーの大きい無秩序な建築とは何だろうと思ってみたりしました。

かなり、面白く読めたのでお勧めです。

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